リチャード・リップマンDR

最近TVで広告を見ない日はないテストステロンについて、「前立腺癌を引き起こすのではないか?」と隣人から質問された私は、テストステロンが癌を誘発するというのは、既にハーバード大学医学部のエイブラハム・モーゲンテイラー教授によって覆された古い考えであることを根気よく説明しました。

残念なことに、1941年にチャールズ・ハギンズ博士がたった1人の患者を例に、前立腺癌がテストステロンによって引き起こされると仮定して以来、「前立腺癌を防ぐためにテストステロンを排除しなくてはならない」といった間違った考えが信じられてきました。しかしながら、テストステロンが癌患者にさえ有益なことを、モーゲンテイラー教授が20年の月日をかけて証明してくれたおかげで、ついに、医学界も注目するまでになったのです。実際に、テストステロン補充療法は、男性だけでなく女性のサルコペニア(進行性・全身性の骨格筋量・筋力の低下を特徴とする症候群)や心疾患を防いでくれることがわかっています。

こういった古い考えが覆される例は、医学革命のごく一部であり、その多くは、一般市民はおろか、開業医や新聞記者にさえ知られていません。

隣人は、「あなたの言うことを全て信じるわけではないが、他にもっと例がありますか?」と懐疑的でしたが、過去20年間で覆された医学理論の例を挙げることは簡単です。

例えば、1943年から1990年代にかけて、腸で最も一般的なバクテリアは大腸菌であるとされてきました。これは、科学者が人間の腸内細菌を研究室の作業台の上で検査したことと、大腸菌が好気性(酸素に基づく代謝機構もつ)バクテリアであったことからくる、間違った思い込みでした。しかしながら、1990年代に好気性および嫌気性(酸素を必要としないバクテリア)の腸内細菌を封鎖環境で検査したところ、5つ嫌気性細菌が大腸菌よりも多いことがわかりました。

また、1995年に2人の著名なオーストラリア人研究者が、ヘリコバクター・ピロリというバクテリアが胃潰瘍の原因であることを発見する以前は、一般に喫煙とストレスがその原因であると考えられていました(1stライン)。2005年になってから、ようやく彼らの素晴らしい発見にノーベル医学賞が与えられましたが、医学界の対応が遅かったせいで、多くの人々が不必要な手術や胃痛に苦しめられました。1995年当時、微生物学部の教授や学部長と議論した際に、「全米で最も優秀であるとされるメイヨー・クリニックの医師らが、バクテリアが胃潰瘍の原因であるという理論など出鱈目だと主張している」と言われたことを、今でも覚えています。

老化防止や年齢管理に関する専門医学は、15年前に私たちが「老化の原因の多くがホルモン欠乏症に起因する」という考えに至るまで、存在しませんでした。この事実を受け入れた一部の医学部で抗加齢医学を教え始めたことから、若い医学生は老化の原因とホルモン欠乏症の相関性を当然のことと考えていますが、年配の医師の中には、何十年も前に自分達が学んだことと相容れないために、未だに当惑される方もいます。私は、医学界の多くを占めるこのような保守派の医師達によって、正しい理論が簡単に退けられることに納得がいきません。

私は、急速に変化する医学についていけない多くの開業医を疑ってかかるべきであり、特に、ほとんどの内科医の予防薬に関する知識が70年代から80年代で止まっている事実を考慮する必要があると考えます。私の主張が疑わしいと思う人は、あなたの担当医がどういった予防策を推奨しているか確認してみてください。恐らく、喫煙、定期的な運動、健康な食事といった、既に25年前から知られていることしか言わないでしょう。劇的に変わる医学を否定する人は、不必要な病気や早老から逃れられない運命にあります。

 

先進的な考え‐ビタミンC‐すべての細胞を構成する成分

老化の根源1~4では、多くの栄養素、ホルモン、ペプチドが老化を予防するだけでなく、逆転も可能なことを強調してきましたが、ここでは、健康と質のよい睡眠に欠かせない栄養素であるホスファチジルコリン(PC)について述べたいと思います。細胞膜の85%を占めるホスファチジルセリンは、健康と老化に関して、極めて重要な役割を果たしています。

 

ホスファチジルセリンの機能

双性イオン(1分子内に正電荷と負電荷を持つ分子)が含まれるホスファチジルコリンは、親水性でありながら、脂肪親和性も強いという特異的性質のおかげで、細胞機能に欠かせない他の重要物質と相互作用するために、細胞膜を横切って細胞内部に分子を届けることができます。つまり、ホスファチジルセリンは、すべての細胞と人体全体の内部作用に、即座にアクセスできるのです。

すべての細胞膜の本質的な構成成分であるホスファチジルコリンは、老化、放射線、化学腐食、あるいはフリーラジカルによる攻撃によって損害を受けます(ACF228)。私たちの身体には、特に老化による損害を被ったホスファチジルコリンを新しいものに取り替える修理メカニズムが備わっていますが、マグネシウムやCoQ10といった栄養素や、成長ホルモン、インスリン様成長因子1、ヒドロコルチゾン、サイロイド、テストステロン、エストラジオールといったホルモンが十分でなければ機能しません。

 

私がホスファチジルコリンの補足を推奨する理由

人体を構成する物質がほぼ7年毎に入れ替わっていることから、私たちの細胞、骨、組織では、新しいものを形成する(同化作用)ために、古いものが破壊されています(異化作用)。ヒドロコルチゾンが異化作用の多くを請け負う一方で、同化作用のほとんどがDHEA、テストステロン、エストラジオール、HGH、IGF-1といった蛋白同化ホルモンによって誘発されます。しかしながら、新しい細胞の形成には、マグネシウム、CoQ10、総合ビタミン、脂肪酸、さまざまな老化防止栄養素(ACF228)に加えて、最も重要なホスファチジルコリンを欠くことができません。

実際にホスファチジルコリンを補足することで、以下のような健康強化が起こります。

  1. 老化した脳の記憶特性を増強。
  2. 粘膜の回復による胃腸機能の改善。
  3. 肝臓機能、腎臓機能、代謝、解毒の活性化。
  4. 脂質のバランスをよくしてコレステロール動員を改善。
  5. 冠状動脈、末梢神経、脳血流の改善。
  6. 細胞膜成分(特にリン脂質とコレステロール)のバランスを調整。
  7. 神経単位膜の硬直によって減少したニューロン機能の改善。
  8. リン脂質と脂肪酸のバランスを改善することで皮膚の機能と健康を回復。
  9. リン脂質と脂肪酸のバランスを改善することで胆汁機能を回復。
  10. ACF228とともに過酸化反応を縮小。
  11. 脳と中枢神経系に対する細胞保護効果。

 

ホルモンで回転率を高めて身体を再建

老化した身体の回復にとって重要なホスファチジルコリンを欠いたホルモン補充療法は、効率的に作用しない恐れがあります。私は、7年で入れ替わる私たちの身体の再建と再利用に、ホスファチジルコリンやDHEAなどのホルモンの補足が必要であると確信していますが、残念ながら、現在の老化防止治療では見過ごされがちな栄養素であると言えるでしょう。

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