マリオス・キリアジス博士著
太古の昔から、原始人そして後の競争心あふれるアスリートも、さまざまな物質を摂取することによって彼らのパフォーマンスを向上しようと試みてきました。アスリートが副作用や有害反応なしにパフォーマンスを向上させる方法を模索し、栄養補助食品をスポーツパフォーマンスの向上のために使用することは広く行われています。
しかし、この分野に興味のある人は、表面的なアプローチをとるべきではなく、科学と医学の示唆に従わなければなりません。多くのプロではないアスリートは、トレーニングとは別にエネルギーを放出するように設計された製品、または代謝を高めるための製品を摂取することでパフォーマンスを向上できると考えています。即座に劇的な持久力とスタミナがつくことを期待して、市場に出回っているいくつかのサプリメントを摂ることには意味がありません。スポーツパフォーマンスの生物学はこれよりもはるかに複雑です。この記事では、そういったプロセスのいくつかの側面について説明します。適切な管理の下で個人に合った方法で使用できる科学的な裏付けのあるいくつかの化合物、栄養素、または治療法などについて考察します。言い換えれば、どのような種類のサプリメントを摂取しても、人それぞれの反応が異なる可能性があり、その人とそのニーズに合わせてサプリメントを調整する必要があります。一般的な原則に基づく医療の個別化は、あらゆる状況、病気、または一般的な健康のために使用するサプリメントのすべてのケースに適用する必要があります。
エストロゲンと代謝
私たちは、年齢とともに変化するエストロゲン代謝が体の健康に影響を与えることを知っています。エストロゲン機能は一般に年齢とともに低下しますが、このプロセスを撹乱させる可能性のある他の環境要因にさらされ、その結果、ある種の癌の発生率の増加に関連するエストロゲン機能が増強されます。全体のプロセスは非常に複雑ですが、全般的な目的は、エストロゲンの過剰機能と機能欠陥のバランスを取り、エストロゲンの毒性を回避することです。この点に関して、さまざまなエストロゲン経路を妨害および調節する可能性のある化合物であるエストロゲン撹乱物質に焦点を当てた多くの研究があります。エストロゲンのシグナル伝達と代謝に関与する450を超えるエストロゲン化学物質とエストロゲン撹乱物質があります。
そのような化合物の1つとして挙げられるのが、ブロッコリー、キャベツ、ケール、その他のアブラナ科(アブラナ属)の野菜の成分であるインドール-3-カルビノール(I3C)に由来するジインドリルメタン(DIM)です。その一番良い説明としては、ジインドリルメタンはエストロゲン機能のモジュレーターとして、言い換えれば、エストロゲンの有益な効果を過度にブロックすることなく、そしてその負の効果の刺激過度を起こすことなく、エストロゲンの正常な機能を回復することです。
ジインドリルメタンは数種類の癌の治療に使用されてきましたが、エストロゲンと運動は相互に影響を与える関係にあるため、ジインドリルメタンは運動と特に関連性があります。たとえば、体内のエストロゲンの過剰または過少は、身体活動のレベルの低下に関連します。エストロゲンは女性に存在するだけでなく、男性においても年配になるほど多く存在することを覚えておく必要があります。年配の女性はエストロゲン機能が低下し、年配の男性はエストロゲン機能が増加しているため、60歳の男性は60歳の女性よりも体内にエストロゲンが多い可能性があります。したがって、エストロゲン機能を調節および正常化するジインドリルメタンなどの製品はこの点において有用です。実際の用語としては、このエストロゲンのバランスは、より強い骨、調節された体脂肪、最適な筋肉量を意味し、これらはすべて、あらゆるアスリートに役立つものです。
投与量は、対処する状態によって異なります。たとえば、癌では体重1kgあたり8mgの用量が使用されていますが、健康的なスポーツ状況に適した通常の状況では、体重1kgあたり1mgから2mgの用量です。
一酸化窒素と血液循環
良好な身体的パフォーマンスは、筋肉の機能だけでなく、筋肉がいかに良く酸素化されているか、そして代謝毒素が筋肉からどれだけ速く除去されるかに依存します。言い換えれば、血液循環がどれほど効率的であるかに依存するということです。
良好な血液循環を確保する1つの方法は、血管を通る血流を改善することです。ここで一酸化窒素が登場します。これは、他のさまざまな作用の中でも、動脈を広げるのに役立つ無色のガスです。一酸化窒素(NO)がフリーラジカルであることを認識している人は多くありませんが、少量なら利益があることが証明されています。一酸化窒素を体内から放出するのを助けることができる2つのアミノ酸は、アルギニン(カボチャから最もよく得られる)とシトルリン(例えば、スイカから)です。アルギニンは、一酸化窒素を破壊する酵素をブロックすることによって機能します(したがって、一酸化窒素の存在量を効果的に増加させます)(Kittel 2014)。一方、シトルリンはアルギニンの作用を増強させます。この研究の著者は次のように提言しています:
L-シトルリン/スイカサプリメントの有益な血管効果は、L-アルギニン/一酸化窒素経路の改善に起因する可能性があります。L-シトルリン/スイカの補給による安静時血圧の低下は、高血圧前症および高血圧症の人に大きな影響を与える可能性があります。急性摂取ではないL-シトルリンの補給は、若い健康な成人の運動パフォーマンスを改善することが示されています。
したがって、これら2つのアミノ酸を組み合わせ(NitricPro™などの市販製品が存在します)、使用すると、運動パフォーマンスの向上に寄与する可能性があります。
注:NO(一酸化窒素)は、血管の内層に見られる内皮層で作られる血液内に見られるガスです。
スポーツにおける一酸化窒素の役割は、最近の研究で検討され、一酸化窒素作用を高めることができる化合物の経口補給が、血清および唾液中のより高い濃度の一酸化窒素ラジカルとして反映されることが示されました。ちなみに、ポリフェノール、フラボン、サポニンなど、一酸化窒素濃度を上げることができる他のいくつかの化合物があります。しかし、シトルリンとアルギニンの組み合わせが最良のようです。一酸化窒素はスポーツだけでなく、血管全体の健康を促進し、老化に関連する損傷を修復するのにも役立ちます。
刺激物質としてのフェネチルアミンの役割
体力を維持する上でのもう一つの非常に重要な要素は、健康な認知機能です。アスリートや一般的なフィットネスのために運動する人は、やる気も即応力もあり、一般に精神的に刺激されています。これが、一部のアスリートが、身体能力を高めるためだけでなく、脳にプラスの効果をもたらすサプリメントを摂取することを選択する理由です。フェネチルアミン(PEA)はそのような化合物の1つです。これは、脳を刺激する効果のある天然のモノアミンアルカロイドです。基本的に、それは過剰な神経毒をブロックすることによって、またはニューロンからニューロンへの情報のより良い伝達を刺激することによって、神経伝達を調節します。フェネチルアミンを含む食品の1つとしてチョコレートが挙げられますが、栄養補助食品としても入手できます。スポーツでの使用とは別に、うつ病の影響を軽減し、一般的に脳の敏捷性を維持するためにも使用されます。一部の人々はまた、より良い勃起を達成するために、または減量の目的でこれを使用します。ここで言及されているすべての化合物と同様に、すべての人に適しているわけではないため、専門家の管理下でのみ使用する必要があります。これを使用する前に専門家に相談するもう一つの理由は、推奨用量についての十分に信頼できる情報がないからです。
<ビタミンC>
ビタミンCは心臓の健康を維持するのに役立ちます。これはアセロラから最もよく得られ、合成ではないことが望ましいです。台湾の科学者は、高用量のビタミンC(ビタミンEと一緒に)が運動誘発性の筋肉損傷に何らかの影響を与えるかどうかを確認する臨床試験を行い、これに18人のエリートアスリートが参加しました。参加者の半数には4日間1日2000mgのビタミンCと1400UのビタミンEが与えられ(試験群)、残りの半分にはプラセボが与えられました。試験群において、炎症および他の毒性マーカー(ミオグロビン、クレアチンキナーゼ、および溶血)が有意に低いことが分かりました。
したがって、ビタミンCの補給は、激しいスポーツ活動中とその後の両方で、運動によって誘発される組織の損傷を軽減することが示されました。
<リボース>
リボースはエネルギーの増幅剤です。これは、筋肉の作用中にエネルギーを提供するアデノシン三リン酸(ATP)の代謝に関与する天然の糖です。激しい運動中は、アデノシン三リン酸レベルが大幅に低下し、回復に数日かかる場合があります。
この効果は、訓練を受けていない人が、しばらくの間、激しい運動をする際により顕著に見られます。アスリートは、アデノシン三リン酸を増やすため、そして失われたアデノシン三リン酸を補充するため、運動前と運動後の両方で、リボースを使用します。運動後の筋肉のけいれん、こわばり、痛みを防ぎます。ある研究では、研究者は、経口リボースサプリメントの利点がアスリートの実際的な利点につながるかどうかを確認したいと考えていました。
その研究の結果を、要約して下記に示します。
この研究は、26人の健康な被験者を対象とした二重盲検クロスオーバー研究であり、一日10gのリボース、そして対照として一日10gのデキストロースを比較しました。すべての被験者は、リボースまたはデキストロースのいずれかで2日間の負荷を完了し、続いてさらに3日間の補給を完了し、これらの3日間の補給中に、各被験者は別々に毎日のセッションで60分間の高強度インターバル運動を行いました。リボースの補給は、運動パフォーマンスの維持、ならびにより低いレベルの疲労感とクレアチンキナーゼ(筋肉損傷後に増加する酵素)をもたらしました。デキストロースの補給で観察された利点はありませんでした。
<MSM(メチルスルフォニルメタン)>
運動が激しい場合、痛み、筋肉痛、フリーラジカルや炎症関連毒素の産生の増加を引き起こす可能性があります。一部のアスリートは、これらの影響を防ぐためにMSMを使用しています。MSMは硫黄ベースの栄養補助食品で、運動後の炎症と痛みを軽減します。
臨床試験では、活動的な男性にMSMサプリメント(1日3g)またはプラセボを4週間与えた後、激しい運動をするように依頼しました。MSMサプリメントを摂取したグループは、プラセボグループと比較して、血中の炎症マーカーの濃度が低いことがわかりました(図1)。著者は次のように結論付けました。
激しい運動は、細胞が追加の刺激に効率的に反応することを妨げる強力な炎症反応を引き起こします。MSMは、運動に対応した炎症性分子の放出を減少させ、運動後においても追加の刺激に対して細胞が適切に反応できるような煽りの低い環境をもたらします。
図1.MSMの投与による炎症効果の経時的な減衰。MSMの有益な効果は明らかにプラセボよりも優れています。
カルノシンとベータアラニン
ジペプチドカルノシン(ベータアラニン、Lヒスチジン)は、数十年にわたってスポーツの持久力(および老化)の分野で使用されてきました。
これは筋肉内に非常に集中しており、細胞内pH緩衝液として機能します。このように、これは高強度のスポーツパフォーマンスを向上させるために使用されます。ベータアラニンの補給は、筋肉内のカルノシンのレベルを増加させます。例えば(de Andrade Kratz et al。2017)の臨床試験では、ベータアラニン(カルノシン)を4週間経口サプリメントとして投与すると、柔道選手の高強度パフォーマンスが改善されることが示され、漕艇競技にも役立つ可能性があります。
これらの理由から、カルノシンは疲労を遅らせ、持久力を向上させることができるため、スポーツにおいて非常に人気があります。しかし、カルノシンには、スポーツに役立つ他の有益な効果もあります。言うなれば、ストレスへの耐性を向上させ、競技者としての運動選手ならびに日常で一般的な健康のために運動する人々の両方に役立つ特定の脳機能を強化するのに役立つ可能性があります。
ただし、これに関連する可能性のある問題が1つあります。カルノシンの有効性にはいくつかの矛盾があり、この矛盾は試験の対象となる実際のスポーツまたは身体活動によります。利益がもたらされる特定のスポーツの具体例は、4kmのサイクリングレース、2,000mのボートレース、100mと200mの水泳レース、格闘技様式の競技および水球です。
いずれにせよ、別の特性として、カルノシンが亜鉛と共同して腸の透過性を調節することがわかっています。激しい運動は腸から血液への毒素の通過を増加させ、熱射病や腹部症状を引き起こす可能性があることがわかっているため、これはアスリートにとって重要です(。亜鉛-カルノシンは、単独で、または初乳と組み合わせて、運動選手でテストされました。亜鉛-カルノシンを単独で、または初乳と一緒に摂取すると、上皮抵抗が増加することが示されました。これは、熱射病などの有害作用のリスクが防止されることを意味します。
ベータアラニンの作用の検討において、これが非常に高いレベルでパフォーマンスを向上させることができるサプリメントであると結論付けられました(Blancquaert et al.2015)。カルノシンは筋肉内カルシウムを調節し、抗糖化剤作用と抗酸化作用を持ちます。全体として、それは筋肉生理学において重要な役割を果たしています。国際スポーツ栄養学会は次のように結論付けています。(図2):
- 4週間のベータアラニン補給(1日4〜6 g)は、筋肉のカルノシン濃度を大幅に増加させ、それによって細胞内pH緩衝作用を示します。
- 推奨用量のベータアラニンの補給は、現段階では、健康な集団に対して安全であるようです。
- 報告されている唯一の副作用は、知覚異常(ひりひり感)ですが、研究によると、これは、低用量(1.6 g)に分割して使用するか、徐放性処方を使用することで軽減できます。
- 少なくとも2〜4週間の4〜6 gのベータアラニンの毎日の補給は、運動パフォーマンスを改善することが示されています。
- ベータアラニンは、特に高齢者の神経筋疲労を軽減します。
- ベータアラニンの補給が高容量(1日4〜6 g)で長期間(最低4週間)である場合、ベータアラニンを他の単一または多成分サプリメントと組み合わせることで有益になる場合があります。
- 25分を超える耐久力、持久力パフォーマンス、およびカルノシンに関連するその他の健康関連の利点に対するベータアラニンの効果を判断するには、さらなる研究が必要です。
図2:(A)0〜6分、(B)8〜25分続く倦怠感(TTE)に対するベータアラニン補給の効果の検討。
より最近の研究では、運動パフォーマンスに対するベータアラニンの利点がさらに検討されています(。1400人以上の個人を対象に、運動時間、パフォーマンス、および消費されたベータアラニンの量に関して研究されました。結論は、ベータアラニンが全体的に有意な利益をもたらしたということでしたが、これは参加者が選択した実際の運動様式にも依存します。ちなみに、カルノシンとベータアラニンは肉類に豊富に含まれるので、これらのサプリメントは、肉類を食べない菜食主義の運動選手に有益な可能性があることが示唆されました。
ここで警告です。使用する各化合物は推奨用量内にとどめてください。栄養素またはサプリメントを組み合わせることは、それらの通常の効果を増強させるだけでなく、副作用も引き起こす可能性があることを考慮する必要があります。したがって、適切な組み合わせと用量を見つけるには、資格のある専門家と協力することが最善です。
まとめ
運動能力を維持し、その能力を競技者のレベルまで高めるには、いくつかの方法があることがわかります。しかしながら、友人が使っているからという理由で摂るのではなく、自分の状況に適したサプリメントを選ぶように注意する必要があります。
私たちの目的を最大に達成するために重要なのは、日常の運動も私たち自身の状況に適切でなければならないということです。ここで、 自分自身に問いかけてください。「私たちの目的は何ですか? 体力をつけるためですか?ボディビルダーになるためですか? それとも競技者としての運動選手になるためですか? あるいは、老化の影響を減らすのに役立つように、ただ一般的に健康な状態でいるためですか?」それぞれの状況によって必要条件が異なります。
ここで言及されている化合物やサプリメントは、この号の他の記事で議論されている他のものとトータルして、全体的に役立つと思いますが、それらの使用は特にあなた自身のニーズに的を絞るべきです。
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