将来の記憶
例えば、友人から頼まれたスピーチの順番が回ってきた瞬間、頭の中が真っ白になってしまい、何を言うはずだったのか全く思い出せず、このまま地球ごと消え てなくなりたいと思った・・・などという恥ずかしい経験は、恐らく誰にでもあることでしょう。また、答案用紙に向かった途端に、勉強して覚えたはずの記憶 が消し飛んでしまったなどということもあるかもしれません。しかしながら、このような困難な状況からあなたを救い出す手立てがあると言ったら驚かれるで しょうか?
デスモプレシンとは?
デスモプレシン(バソプレシン)は、人間を含む大部分の哺乳類の脳に自然発生するホルモンの人工形です。紛らわしいことにバソプレシンは、アルギニンバソ プレシン(AVP)、アルギプレシン、または、より一般に反利尿ホルモン(ADH)という別称でも知られています。デスモプレシンは、例えばリプレシンや ピトレシンといった初期の動物性バソプレシンに比べて、より強力です。
バソプレシンの働き
ペプチドホルモンであるバソプレシンの大部分は、脳にある豆粒ほどの腺(下垂体後葉)に保管され、必要な時、血流にリリースされますが、多少のバソプレシ ンは直接、脳にも放出されます。バソプレシンの主要な機能は、塩の量にも影響を及ぼす体内の水分管理です。例えば、脱水状態を起こすとバソプレシンが放出 され、腎臓における節水作用から尿が濃縮・減少し、排尿回数が少なくなります。また、血管を狭くする(血管の筋肉壁を収縮)ことによって血圧を上げたり、 温度規制を助けたりもします。寒い時、皮膚表面の近くにある毛細管が収縮することによって血液の流れを防ぎ、熱を失う率を低めます。
上記の事柄に加え、バソプレシンが脳にある種の神経学的影響を及ぼすことが知られていますが、特に、記憶の形成に大きく関係しています。バソプレシンは、 部分的に"ヒッポカンポス(記憶が保存される部分)に記憶を挿入する"役割を果たすと考えられています。これは、攻撃性にも関与しています。
服用目的
記憶の向上
デスモプレシンは、「頭をよくする薬」、「スマートな栄養分」、「向知性薬」または「脳エンハンサー」と呼ばれる、ヌートロピックとして知られている薬に 含まれるものです。ヌートロピック薬は、認識能力を向上または強化する、すなわち脳の機能と収容力を向上させます。すでに述べたように、バソプレシンには 記憶形成との直接的な関連があることから、記憶喪失患者の治療に用いられていますが、新しく形成された記憶を直接ヒッポカンポスへ挿入、保存することで、 短期的な記憶の向上にも役立ちます。
突然、「バソプレシンによって将来も記憶できる」と言われても、恐らく何のことだか理解できないと思われるでしょう。まだ実際に起こりもしていないこと を、どうやって覚えることができるのでしょうか。それはつまり、何かが起こる前にバソプレシンを服用することで、その記憶がより鮮明に残るということを意 味するのです。
このような、新情報を記憶に鮮明に植えつける能力から、例えば、試験に備えての詰め込み勉強、スピーチや講義の暗記、業務会議前の情報収集など、新しく大量の情報を覚えようとする際に、バソプレシンが非常に役に立つのです。
夜尿症
排尿をコントロールすることから、子供の夜尿症のために使うといいでしょう。
前立腺疾患
夜間の排尿は、前立腺疾患を患う男性にとって大きな問題です。バソプレシンの服用による疾患そのものへの影響はありませんが、夜間排尿量を減らすことで睡眠を妨げないという効果が得られます。
尿崩症
尿崩症(DI)は喉の渇きがひどく、薄められた尿が大量に排出される状態で、水分摂取を制限しても症状は緩和されません。徴候が類似していることがありますが、真性糖尿病と混同してはいけません。DIには、以下のようないくつかの形があります。
- 中枢性尿崩症
類肉腫症のような腫瘍や、脳卒中、神経外科または何らかの非常にまれな原因によって視床下部または下垂体が受ける損害に起因。視床下部が損傷を受けることで喉の渇きの感覚が完全に失われ、脳下垂体後葉の損傷によりバソプレシンの欠乏が引き起こされる。 - 腎性尿崩症
腎臓のバソプレシンへの感度の悪さが原因。尿濃縮ができず、多尿と多飲が特徴。 - 口渇性尿崩症
視床下部に位置する喉の乾きに関するメカニズムが損害を受けることが原因。 - 妊娠性尿崩症
妊娠中にのみ発症。中枢性尿崩症と妊娠性尿崩症はデスモプレシンに反応する。妊娠の度に患う可能性もあるが、産後4~6週以内に消える。
加齢性記憶障害
残念なことに、脳中のバソプレシン濃度は年齢と共に減少しますが、デスモプレシンは、老化が原因の記憶障害、老人性痴呆症、アルツハイマー病、コルサコフ症候群といった疾患の治療に使われる他、高齢者の気分や記憶の改善にも役立ちます。
その他の用途
デスモプレシンは、軽度の血友病Aまたは特定のフォンウィルブラント病の出血の予防にも用いられることもあります。
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